I群抗不整脈剤を用い薬剤負荷試験を行われる先生方へ
本研究での症例登録にご協力を頂き、誠に有り難うございます。
本レジストリーは、現在の医療倫理上並びに医療保険上で問題になりそうな点も含まれております。
即ち、本レジストリー項目の中にI群抗不整脈剤に対する反応を記載する項目で、負荷薬剤としてpilisicanide使用のお願いが記載されております。これまでの薬剤負荷検査は、医療における医師の裁量権および責任の下に行われてきました。しかし、pilisicanideはじめ一般的な抗不整脈薬の適応疾患には、Brugada症候群患者に対する薬物負荷の適応はありません。このことより、使用薬剤料・手技料など費用面の問題、事故発生時の責任の所在など、さまざまな問題が生じる可能性があります。
さらに危惧すべきことは、このI群抗不整脈薬負荷テストにて致死的な心室細動が誘発されることが、少なからず報告されております。しかも、薬剤投与直後ではなく投与3時間後に心室細動が出現した症例もあるようです。このように危険性を含んだ負荷検査であるため、その施行に関しては細心の注意を払って行うことや個々の症例における負荷テストへの十分な理由付けと責任の所在が確認されていることが必要と思われます。
つきましては、先生方がBrugada症候群及び特発性心室細動(分類不能)症例患者に対してI群抗不整脈薬負荷テストを行う際には、充分にその適応・意義・患者への説明および同意書の作成並びに医療事故の防止に留意され、万全たる準備の下に行われることをお願い申し上げます。尚、同意書(貴院での書式をご利用下さい)は必ずカルテに保存されるようお願い申し上げます。
また同様の理由から、本レジストリーへの参加自体、本レジストリーに記載されている薬物負荷施行自体、薬剤選択などの負荷検査のプロトコール自体に関しても強制するものでは決して無く、全ての判断を先生方にお任せするものです。
別紙に、具体的なI群抗不整脈薬負荷時の注意項目などを掲載しておりますので、是非とも参照して頂き、事故のないように施行されることをお願い申し上げます。
<特発性心室細動研究会(J-IVFS)事務局>